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緘黙当事者の何でも書くブログ

小説のネタとしての場面緘黙

 

私の世界を変えてくれた君へ。

私の世界を変えてくれた君へ。

 

こういう本が出たらしい。

主人公は中学生のときに途中からいきなり場面緘黙を発症してしまった女子高生。

 

当事者としては「中学生のときに友達に裏切られたことがきっかけで突然緘黙を発症し、学校で一言も喋れなくなってしまった」という設定には違和感しかない。

この本を全部しっかり読んだわけでもなく、無料で読める元々の小説の冒頭部分をちょこっと読んだだけなのでエラソーに語るわけにもいかないのですが…。

まずその冒頭部分で違和感しかないわけです。

 

もちろん思春期に突然発症パターンが現実に全くないわけでもないと思います。

それでも「友達に裏切られたショックで…」などと、はっきりと原因が分かっていることのほうが実際は少ないはず。

緘黙に限らず、現実世界でははっきり原因が分からないけれどなぜかそうなってしまった、ということも多いと思うんです。

こういう小説とかだと、はっきり原因がないと読者が納得しないから~、とかあるのかもしれませんが。

 

もう一つ激しく違和感なのが、緘黙を発症してしまった主人公は突然学校で一言も喋れなくなってしまいました…という設定なところ。

もっと徐々に喋れなくなってしまった…ならまだ分かるよ。それまで普通に喋ってた人が必要最低限のことも突然言えなくなる?

 

突然声が出なくなる失声症という設定なら分かる。

だけど緘黙はそういうことじゃない。

どちらかと言えば、社交不安障害のほうが近いものがあると思うし。

ショックなことがあって声が出なくなるという設定が使いたいだけなら失声症でよくない?と思ってしまいます。

 

場面緘黙という症状が一般に認知されていくのは嬉しいですが、こういう小説で中途半端に設定に使われるのは当事者としては正直微妙ですね。

中にはきちんと色々調べてから書いている方もいらっしゃると思うんですが、やはり経験者ではない方の緘黙の想像なんてこの程度が限界なんだろうか?と内心エラソーに考えたりしてしまいます。

 

もちろん創作なので、そんなの自由です。

そういう場面緘黙のキャラクターがいる世界でのお話なんだろうし。

それでも現実にある症状名や病名などを使うときにはもっと実際の当事者の声を聞いたほうがいいでしょうね。

取材までいかなくても、今はネット上で当事者の声はいくらでも出てくるはずですし。

 

この本は中高生くらいの女の子が対象なんだろうし、そんなことにいちいちマジレスするようなことではないのかもしれないけど。

中高生の女の子が読む夢物語なんだろうし。

読んだことないけど、こういうのって結局都合よくこんな主人公にも優しくしてくれるイケメンの男の子が現れて恋人になってくれてその後色々あるけど、最終的に幸せになりました、とかそういう話でしょ?

読んでなくてもだいたい分かる。(もし違ってたらすいません)

 

いや、緘黙の現実はこんなもんじゃねーぞ、ってめっちゃ言いたくなる。

まず緘黙の女子にそんな都合よくイケメンの男子が好意を持ってくれること自体がまずない。

あったとしても純粋に人として好きとか、絶対ないと思う。

こいつ大人しいからやれるかも、とかそんなんしかどうせ頭にないやろ。

そこまでなくても、とにかく緘黙の女子は好かれるどころかまずきもいと思われる可能性のが高い。

 

緘黙というのは緘動というのもある場合がある。

とにかくこれがある人の場合、きもさに拍車がかかっている。

どう考えても障害者。

そんな人を恋愛対象に見る人はなかなかいないでしょう。

 

どんなに美人とかかわいいと言われる見た目をしていたとしても緘動がある人の場合、そういう目ではなかなか見られないと思うんですよね。

むしろ男子なんてあからさまにバカにしてきたりとか、そういう人も多いですから。

 

私はそういう男子が嫌だったので高校はわざわざ女子校を選んだくらいです。

10代で恋愛なんて諦めてましたね…。

 

でも、創作物は自由だから、これはこれでいいとは思いますよ。

いいとは思うけど、所詮小説のネタとして場面緘黙というのが使われてるだけであって、場面緘黙のことをきちんと取り上げた小説とは言えなさそうだな、という印象は否めないです。

読んでないのにエラソーに作者の方には申し訳ないですけど。

 

当事者の中でも「場面緘黙が取り上げられてる」ということだけで十分嬉しいと思う人も多いのかもしれませんが、私はそういうタイプじゃないだけです。

 

小説としてあんまり面白くないなら読みたくないし、設定に違和感あると「それはちょっと…」って突っ込みたくなるので。

 

こういう系の小説って、病気とかを美化してる感じがして個人的にあんまり好きじゃないんですよね。

まあ、私自身も話考えたりするの好きなので、作者側の気持ちも少しは分からんでもないのですが…。

 

場面緘黙の場合、場面緘黙という言葉だけが一人歩きしてしまうことも多いので、色々突っ込みたくもなるんですよ。